2022年の夏、父の余命宣告を受けました。
一人っ子の私は、認知症の母と伯母を抱え、白血病であった父の看護をしながら、毎日どんな風に過ごしていたのかも思い出せないほど必死でした。何かにすがりたくてもすがれない。最愛の父を失う恐怖と、母と伯母の面倒をどうやって見ていったら良いのか途方に暮れました。
ちょうど、下の子供が就職し、子育てを卒業した年でした。これから自分の人生を謳歌しようと計画を立てていた私。目の前が真っ暗になったのを覚えています。
父が亡くなり、四十九日が終わる頃には、精神的に限界でそのうち体調も崩しはじめ、コロナに罹り、喘息の発作が毎日のように襲ってきて咳でぎっくり腰になるという三重苦(笑)心配をして連絡をくれた友人たちに、メールを返すことすらできませんでした。そして、気づくと父のところにいきたいと考えている自分がいて、ゾッとしました。
目標を失い、人生が見えなくなってしまったけれど、唯一の救いは、仕事を持っていたこと。人材育成の会社を経営している私は、企業の研修やコンサルがメインで、とにかく目の前の仕事に穴をあけないようにと、踏ん張っていたのを思い出します。体力的にとてもきつかったけれど、自分の心を保つためにも、仕事を持っていて良かったと思っています。お客様のために何ができるかを考える時間は、家族のことを考えなくて済む、自分のために使える時間でした。仕事がなかったら、私は全てを失っていた様に思います。
周囲の方々に支えてもらいながら、少しずつ自分を取り戻した私は、時間の使い方や、自分の扱い方も次第にわかってきました。介護はチームを作ることが大切だということもわかり、チームマネジメントなら、得意とする分野だということにも気づけました。
子育てと介護の違い
以前「子育てと介護はこんな風に違うんだよ」って聞き、その時はピンと来なかったけれど、あ〜こういうことかって理解できました。子育ては終わりが来るし、子供の成長が見えるから、ポジティブな未来が想像できる。介護は、終わりが見えないし、できないことが増えていくから、常にネガティブな未来がチラつく。子育てはSNSに投稿したり、みんなと話題にできるけれど、介護は何となくオープンにしにくい。同情されたくないなって思ったり、仕事が減るのではないかと思っている人もいる。
日本は既に超高齢化社会に突入し、一人で複数の人の介護を請け負う時代。なのに、いろいろなことがグレーで、闇に包まれていて、ヤングケアラーの若者も増えている。(だいたい『介護』ってワードがネガティヴなイメージなんだよな。大事な家族の『サポーター』っていうワードの方が近いかもしれないな・・・)
とにかく私は、超高齢化社会をもっとポジティブで、明るい社会なんだということを伝えていきたい のです。現に、母や伯母とのやり取りの中で受け取ることもたくさんあって、親子関係も激変して、幸せを感じながらサポートすることができているし。(そればかりではないのが現状ですがw)母や伯母の生き方や、あり方、私をどんなに愛してくれているか。介護前には見えなかったたくさんのことも見える様になりました。
人それぞれ状況は違うけれど、誰もがみんな『ハッピーケアラー』になれたら良いなって思うようになりました。これから様々な局面にぶつかることは想像できますが、以前の私と同じ様に苦しい思いをしている人達に、そしてこれからその可能性のある人達に向け、どうしたらハッピーケアラーになっていくことができるのか、お伝えできたらなって思っています。
そして、介護する方もされる方も、幸せに、充実した人生が送れる様に、社会環境を少しずつ変えていけたらと思っています。
誰かのサポートが優先で、自分の人生が後回しになっているあなたへ
長くなりましたが最後に。
一人で毎日、大切な人のために、自分の時間と心を捧げているあなた。
あなたは一人じゃない。
今は苦しくても、きっと道はある。
自分の人生をど真ん中に置いて、生きてもいいんだよ。
私はそう言ってあげたい。
暗いトンネルの中で孤独と戦いながら、介護生活を送っている方達に、この言葉が届きます様に。